技術情報

ルールベース方式画像処理技術

検査のためのルールベース方式画像処理は、FAカメラで撮像した2次元デジタル画像データに対して、適切なアルゴリズムで処理を行います。ルールベース方式画像処理では、まず、通常、入力された画像データを変換処理(「前処理」)します。例えば、入力されたカラー画像データのノイズを除去し(「フィルタ処理」)、ノイズ除去された画像データに対して、濃淡の閾値を設定し白黒画像データへと変換する「2値化」の変換処理や、検出したい物体(傷、汚れ、異物等の欠陥)の境界を検出(「エッジ検出」)する変換処理があります。また、前処理したデータから検査のための特徴量(傷、汚れ、異物等の寸法や大きさ)を抽出するための基準値も設けて、最終的な検査の判定を行います(「ブロブ解析」)。ルールベース方式画像処理では、以上のように、開発者が一つ一つルールを決めて、お客様がご希望される検査仕様に合わせて、最適なアルゴリズムを作成します。

しばしば、画像処理技術を使うと、“GIGI(Guide(ロボット等のガイド), Inspection(検査), Gauge(寸法計測), Identify(バーコード等の文字認識))”の4つができると言われますが、ルールベース方式を採用すると、この4つのすべてが実現可能です。作業者が目視で行っている検査方法がアルゴリズムで100%ルール化できれば、ほぼ完璧な画像検査装置を開発することが可能です。また、AI深層学習と比べて検出精度が非常に高く、処理速度が速いのも特徴です。一方、検出精度は、カメラ、レンズ、照明等の光学的ハードウェアの性能に高く依存します。検査装置の導入後の撮像条件もきっちり管理していく必要があります。少しでも、カメラの向きが変わったり、レンズの焦点が外れたり、または照明の明るさが変わったりすると、検出精度が大きく低下することもあります。

ルールーベース方式のメリット

  • 希望する検査仕様でアルゴリズムを作成できる
  • Guide / Inspection / Gauge / Identifyの4つとも実現可能
  • 検出精度が高い
  • 処理速度が速い

ルールーベース方式のデメリット

  • 事前に定量的で明確な検査仕様が必要
  • 光学的ハードウェアの費用が高額になることがある

当社は、以上のような技術を活用して、得意・不得意な事柄、様々な留意点に配慮してルールベース方式による画像検査装置を開発しています。また、開発当初に時間をかけて光学・撮像条件の検証やアルゴリズムの検討を行い、お客様にルールベース方式による画像検査装置を導入頂く時点で、実現可能な一番高い検査精度でご利用頂けるように努めています。

当社は、運用開始後の使用に費用が発生するような画像処理ライブラリを一切使用していません。当社が開発したルールベース方式画像処理装置はすべて売り切り製品ですので、運用開始後の固定費の心配はまったくありません。

当社ルールベース画像処理装置の特徴

  • ❶ 開発当初にしっかりと光学・撮像条件をを検証するので、高い検査精度を実現できる
  • ❷ 画像処理ライブラリーを使用しないのでランニングコストがかからない

導入実績

  • Kunshan Giantplus Optronics Display Technology様の液晶パネル検査を自動化

課  題

Kunshan Giantplus Optronics Display Technology様の中国昆山工場では、作業者が液晶パネル検査をすべて目視で実施していました。中国では、従業員の入れ替わりが多く、技能を持った作業者を確保するのにも苦慮され、また、年々人件費も上昇しています。

Kunshan Giantplus Optronics Display Technology様の液晶パネル検査の生産現場では、液晶パネルと保護ガラスとの間へ混入した埃や傷、パネル自体の不具合である黒点、輝点、線欠陥、色ムラ等の欠陥検査を目視で実施しており、目視による欠陥の見逃しや検査タクトタイムの向上が大きな課題でした。

解決策

ルールベース方式画像処理検を採用して検査装置を開発し、液晶パネル検査の自動化を実現しました。照明の当て方の検討を重ねて行い、画像処理アルゴリズムにも工夫を凝らし、液晶パネル表面に付着している埃と異物として混入している埃を、画像検査で切り分けられるようにしました。

成  果

すべての欠陥検査について自動化でき、現在は、目視検査を行う専従作業者はおらず、作業者は、液晶パネルを検査機へ搭載する作業だけを行っています。また、1映像パターン(1撮像)あたりの検査時間も、約1.5秒となっており十分な速さで検査を行っています。

開発期間

カメラ・レンズ選定、撮像検証、照明設計・製作、治具設計・製作、ソフトウェア開発を含めて、約半年。

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